キテキ

はづき真理のブログ

『鳩のおとむらい』にエッセイを寄せた話

2023年11月11日の文学フリマ東京37にて頒布された『鳩のおとむらい 鳩ほがらかアンソロジー』にエッセイを寄せました。

文学フリマの公式ページ。

文学フリマ(文フリ)というイベントについては数年まえから旧Twitterで存在を把握していた。おもしろそうだなあと思うものの、もう長いことまとまった一次創作作品を書いていない自分は、もし今後即売会に関わるとしてもここではないんだろうな、一般参加は興味あるけどな、などと思ってきた。

今回エッセイ寄稿の機会を得たのは、風が吹いたら桶屋が儲かる的な言でいえば、イーロン・マスクのせいである。どういう人物なのかお金持ちで評判が悪いこと以外にとんと具体的な人物像が描けないイーロン・マスク、やつがTwitter社を買収したときにけっこう大きめの動揺がユーザーに走ったと思う。そのときもべつの場所を用意することはなかった自分だが、TwitterTwitterという名を失くし、tweetが鳥のさえずりでなくなったことは大きかった。おまけに課金の話がでてきたので、こりゃあ本格的にべつの場所を作っとかないと、と思ったのである。

で、9月19日にMastodon アカウントを作った。作るまでは、どのサーバーにしようか、この選択で政治センスを問われるぞと気負っていたのだけどなんてことはない、Mastodon開発チームが運営し公式アプリで選択肢として最初から用意されている @mastodon.social にしてしまった。安直。

Twitterにおいて、基本的に自分はフォローの際「リツイートを非表示」を選択している。タイムラインを自分が選んだアカウントのことばで埋めたいので。Mastodon でも当初は「ブーストを非表示」を使っていたのだが、Twitterにくらべるとまだまだ常用されているアカウント、および投稿の数が少ないのが現状であった。更新してもあたらしい投稿がないのはちょっとさみしい。というわけで一日か二日で「ブーストを表示」に設定し直した。

そうしたら流れてきたのである、「鳩の作品を探しています」という投稿が。9月20日の夜のことだった。

募集要項を読むと、これを目にするまで当該サークルとなんのゆかりもない自分であっても応募可能だった。Web公開されている主宰者の作品を2篇読んだ。鳥たちの話、ハシビロコウの話。鳥の話を書く人なのだなあ、と思った。自分は鳥、とくに鳩は格別に好きというわけでもない。冬になると近所の川で見られるオオバンにここ三年ほどきゃっきゃしているが、水鳥たちとくらべてスズメとカラスとハトへの関心はひくい。しかし「鳩」と「弔い」というワードで、ふと浮かんだ記憶があった。

ふとんに寝ころがりながら、iPhoneのメモ帳にきいた話を打ちこんでいく。この深夜テンションで書き終えたら送ってしまおう。たぶん2時くらいにはできあがった。達成感で浮かれた気分のまま数回読み返した。よしよし。翌朝になったらGmailにコピペしよう。さあ寝よう。

しかしひさしぶりに「本作り」の一端に触れてうきうきしている頭はなかなか休まらない。書いたものを何度も反芻する。反芻、しているうちに気がついた。これ、創作ではなくエッセイで、つまり実際にあったことで、そのまま世に出しちゃうと、問題がない? 起きてまたスマホを手に検索する。アウト。はい、アウトです。

ああ、深夜テンションで気持ちが盛りあがっていたけど、エッセイといえどもひさしぶりの創作であったけれど、これはボツだ。しょうがない、寝よう。

しかしやっぱり頭はいそがしく、眠れない。

ボツをおしむ気持ちと並行して、鳩エピソードをいくつか思い出していた。だいたいTwitterに書いたものだ。集めたら、さっきのボツ分くらいの文字数になるんじゃないかな? 起きてまたまたスマホを手に、メモ帳に打ちこみはじめる。思い出した鳩話はよっつ。タイトルを冠するほどじゃないので漢数字でナンバリングする。そしてボツにした内容も「四」として活かし、できあがったのが「鳩話五選」である。五選といってるけど自分のなかの鳩エピソードMAX値である。読みは「はとばなし」のつもりだがルビをふってもらうほどのことじゃない。

かくしてまるきり初対面の主宰者に「はじめまして」と鳩話を応募した。9月21日11時36分のことである。

このとき自己紹介として書いた「人生だいたい家にいます」、特に考えもせずこれにしたのだが、最適な気がしたのではてブaboutページにも書きました。

そして77篇の鳩が集った『鳩のおとむらい』は文学フリマ37で会場搬入分はすべて羽ばたいていったそうです。通販や書店委託分、直近では11月18日、京都の「かぐやフェス」でも入手のチャンスがあります。

※小声書房通販ページではSOLD OUT

自分はいま読んでいる最中なんですけども、楽しい、そして、おもしろい。さまざまな鳩たちがさまざまに活かされたなかにあって、自身の文章の練度やできごとの平凡さにふへへっという気分になるが、楽しい、そして、おもしろい。

いずれ『鳩のおとむらい』全77篇中76篇感想も書きたい所存です。