キテキ

はづき真理のブログ

ロアルド・ダールの「白鳥」

自分はいかなる映像配信系サブスクにも入っていない。

ダール作品の映像化の権利をNetflix が取得した、という報を得たのは2018年の12月。当初はアニメーションで、という内容だったみたい。

そして自分はさっそく「白鳥」に触れている。

Henry Sugar の文字列を発見したけど短篇集のオムニバス映像化じゃなく表題作だけだろうなと思っている。

すこし飛んで2022年に、実写だ! でもヘンリー・シュガーだけなんだろうな、ドクターストレンジじゃんと思っている。

そうしたらば本日知ったんですが、原作で7篇収録されてる The Wonderful Story of Henry Sugar から4篇を映像化、そして「白鳥」もそこに入っていると!

非常にウェス・アンダーソンナイズされたビジュアルがわかる予告編が見られる。

自分とロアルド・ダールとの出会いは8歳。ネパールのインターナショナルスクールでのことだった。小学2年生の1学期を終えてむこうに行ったらば、3年生に入れられた。これは9月はじまりの学校で8月生まれの自分が早生まれにあたるからとかだれかにいわれた気がするけど、ちがわない? 4月はじまりの学校で3月生まれは「早生まれ」っていわれなくない?

いま書いてて思ったけれど、4年生の1学期を終えていった9月生まれの兄は5年生に入れられていた。早生まれ適用があるとすればこっちだろうか。たぶん人数の兼ね合いで「希望通りじゃないがこの学年あたりでよかろう」って編入された気がする。

ともあれ、3年生だ。1学年1クラス。日本人補習校でいっしょの子がふたりいるので心強く思った。*1

教室には絨毯引きの一角があって、2辺が低い本棚で囲われていて、先生が本を朗読してくれる時間は靴をぬいでそこに座った。あとから思えば、自分の編入したときに読まれていたのは『おばけ桃の冒険』*2だった。自分が「巨人と女の子の話だ」くらいは理解できるころに読まれたのが『オ・ヤサシ巨人BFG』。あとたぶん、映画を見せてくれる授業(なのかレクリエーションなのか定かでない)で『夢のチョコレート工場』を知ったのもこの学年だった。先生がダールを好きだったんだろうか。自分はこの作品群の作者名を「ロー・ダー」という音として覚えた。

学年がひとつあがって4年生、このときの先生はリン・リード・バンクスの『小さなインディアンの秘密』『ようせいティキのおくりもの』を読んでくれた。やっぱり先生の好みかな? あと先生本人か、学校関係者かが作者にツテがあったらしく、この学年のときはリン・リード・バンクス本人がやってきてみんなからの質問にこたえる、という機会があった。*3 そして、ロアルド・ダール(日本ではそう表記されることをこのときには知っていた)の短篇「白鳥」。

長編は何日もかけてちょっとずつ読み進めるけど、この日の短編は1回で終了した。みじかい話だった。みじかいが、悪童と呼ぶにもことばの足りないとんでもないガキがふたりも登場し、より年少のチビの子が甚振られ、あわや殺されるといったところでーーというその話を、自分は「!? !? !?」と聞いていた。英語にも慣れて、ESLクラス*4も卒業したけど、なにか聞きのがしたことでもあるのかも。なんだったんだ、いまの話は。

ここから記憶があやふやで、このあと自分は英語で The Swan を読んでみたのだったか(実際に Book Fair の催しで The Swan を収録したThe Wonderful Story of Henry Sugar and Six More を購入している)、日本に一時帰国したときもしくは小学4年生(ネパールでは5年生)の終わりごろに最終帰国したのちに日本語訳を読んでみたのだったか。そのへんはあいまいだけれども、その「確認」をしたとき、朗読時の聞きとり理解に問題はなかったことがわかったのだった。ただ、自分が「えっなにそれ」と思ったままの話だった。

この「えっなにそれ」を自分は「とても好き」と名付けて、いまに至っている。

あー、ウェス・アンダーソン、どういう仕上がりになってるだろう。焦らないけど、機会があれば確認しよう。

*1:まあ登校3日めで泣いて手足が痺れて固まって保健室行ったけれども

*2:田村隆一訳。おそらくいまもっとも目につきやすい柳瀬尚紀訳では『おばけ桃が行く』

*3:自分は「自分の書いた作品のなかでどれがいちばん好きですか」と問い、ふむ、と一呼吸おいて「あなたにきょうだいはいますか」と質問を返された。いる、と答えると「ではあなたの問いへの答えは、あなたの母親が子どもたちのなかでだれがいちばん好きかときかれたときと同じです」。なるほど〜と納得したのだが、これ、子どもの環境によっては地獄の回答になるな

*4:English Second Language, 英語を第二言語以降とする生徒のために学年を超えて用意されてたクラス。本クラスが一定の英語力を必要とする授業をしていた場合などに行くことになっていた